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紅茶国C村の日々

セント・ヒルダズ・カレッジと津田梅子

シャペロン関連記事はこれが最後です。

ブログとプライバシーの関係は、私には、まだ未解決のエリア。
半分プライバシーをキープしながら、あとの半分はもろにそれをさらけ出してるこのブログ。
どうか、どなた様にもご迷惑がかかることのありませんように、と願いつつ書いています。

なんて、いつも前置きが長いのがこのブログの欠点でしょうか。(笑)
今回は、隠し立てのないありのままの出来事を書いてしまおうと思います。
もう、私はこのブログで、たぶん年齢も、出身校(大学)もカミングアウトしました。
今さら隠したってはじまらん、という話になってきていると思います。

シャペロンを仰せつかったのは母校津田塾大学の同窓会ロンドン支部からのご指名によるものでした。それで、どうして津田塾大学の学生たちがヨーク大学で夏期研修をしながら、オックスフォード大学のセント・ヒルダズ・カレッジに行ったのか、と疑問に思われた方はいらっしゃるでしょうか。

日本のどの大学の学生たちが海外のどの大学で夏期研修をしようと、それは「カラスの勝手」かもしれません。それぞれの大学がそれぞれのご縁で望ましい行き先を見つけて、長年そのプログラムを続けることは、きっと価値ある国際交流なんだと思います。

津田塾+ヨーク大学のご縁は今年で28年目だそうです。セント・ヒルダズ・カレッジに学生が行くようになって何年目なのかはわかりませんが、こちらの方はそう古くないと思います。おそらく10年目に入っていないような気もします。

津田塾大学の同窓会がまとまった寄付金を出して、セント・ヒルダズ・カレッジの庭に梅の木を植え、通称「梅子ガーデン」を作ったのは、2011年8月のことでした。いえ、梅の木を植えたのは、もちろんセント・ヒルダズ・カレッジでしたが。

ここ(↓)



かれこれ8年前のこと。この時、ヨーク大学に夏期研修に来ていた津田塾の学生たちも梅子ガーデンの除幕式に参加したのでした。その時見事なアフタヌーン・ティーをごちそうになったのを覚えています。除幕式には大学の学長先生初め同窓会の役員の方々も何人か参列されて、その後、一緒にコッツウォルズをおんぼろトヨカロでご案内したことも上の記事に含まれています。

おそらくヨーク夏期研修にセント・ヒルダズ・カレッジが付け足されるようになったのは、その後のことじゃないでしょうか。


セント・ヒルダズ・カレッジと津田梅子_e0010856_23271729.jpg


ほんのゴルフ棒くらいの細い梅の木が、あれから8年、こんなに(↑)大きくなりました。

でもって、どうしてセント・ヒルダズ・カレッジに梅子ガーデンがあるかというと、
梅子さんが1899年に3か月間ここに滞在したからでした。今からちょうど120年前のこと。

セント・ヒルダズ・カレッジにとっては最初の海外からのアカデミック・ビジターだったそうです。
当時はまだほんの10数人(たぶん)ぐらいの女子校で、チェルトナム・レイディーズ’・カレッジを卒業しても女子の高等教育(大学)がまだ開かれていなかったとき、このセントヒルダズの学生たちはオックスフォード大学での聴講を許されていたそうです。梅子さんはこの時30代でしたが、ガウンを着てオックスフォード大学の授業を聴講する機会を与えられました。その時の日記も詳しく書かれています。その後、梅子さんが1900年に今の津田塾大学の前身である「女子英学塾」を創設し、関東大震災の時塾が大きな被害を受けたときは、セント・ヒルダズ・カレッジの方々からのお見舞いの寄付金もいただくほどの暖かい交流が続けられたのでした。



セント・ヒルダズ・カレッジと津田梅子_e0010856_23142387.jpg



それで、梅子さんがこのカレッジに3か月滞在した後、ロンドンに移動してから、この学校の当時の校長 ミセス・バロウズにあてたお礼の手紙というのが、セント・ヒルダズの古文書として図書館に保存されておりました。今年、セント・ヒルダズを31名の学生たちと訪問した時、セント・ヒルダズの卒業生でもあり、役員をしておられるGT女史が、なんと図書館の司書、アーキビスト(古文書係)の方に連絡して、下のような梅子さんの手紙のコピーを私にくださったのでした。




セント・ヒルダズ・カレッジと津田梅子_e0010856_23144848.jpg

写真の白い部分は、アーキビスト(古文書係=司書)の方が梅子さんの手紙を読みやすいようにタイプ打ちして同じコピーに含めてくださったのでした。


学生たちは、梅子さんとセント・ヒルダズ・カレッジのつながりについて、カレッジの名誉教授から1時間の講演をしていいただいたのですが、その後、みんなで梅の木を見に行った時、講師のかたやGT女史と会話をしているうちに、手紙を見せていただけるだけでありがたいと思ったのですが、きれいにコピーしていただけるなんて、思ってもみませんでした。

学生たちには、全員につながっているラインでこの写真を送っておきました。




セント・ヒルダズ・カレッジと津田梅子_e0010856_23151503.jpg


梅子さんの手紙は、きれいな筆記体で、3か月間のカレッジでの滞在に感謝し、出会った多くの方々に伝えたかった御礼とお別れを(もちろん流ちょうな英語で)書きつづってありました。 この下MOREにタイプ打ちをそのままタイプしてみたいと思います。






セント・ヒルダズ・カレッジと津田梅子_e0010856_23180595.jpg



こまやかな交流の跡を垣間見ることのできるお手紙だと思いました。
『礼状』って大事ですね。つくづくそう思わされました。

イーメールなどなかった時代に、一つ一つの出来事にていねいに感謝の気持ちを表して、言葉につづっていくことで、心と心のつながりが深まっていくのでしょうね。

梅子さんが、特にアメリカ留学から日本に戻ってから、自分が何をすべきか、何をしたいかと、長いこと模索して、少しずつその準備を積み重ね、女性のための高等教育機関をつくろうと苦心したことは、かんたんな短い言葉では表しつくせないものがあると思います。初志も大切だけど、目標を見すえてそれに向かっていく意志の強さも大事だと、つくづく思わされました。








75 Onslow Sq. S. W.
March 18th 1899

My dear Mrs. Burrows

I reached London safely to find it in thick fog, and this morning, it is quite dark here at ten o'clock, so it is a great change from sunny Oxford.

Thank you so much for seeing me off, and speeding me on my journey. I left Oxford with many regrets. It seems hard, that we have to always be moving on in this life - nothing stands still as it was. I wish my Oxford visit might be renewed again some time in the future. I should like to live it all over again.

Thank you so much again and again for all you did. I do appreciate it so much, and I can not bear to feel I shall not see you again to tell you so, before I start home. As yet I have seen no one but will go to the Legation tomorrow, and make my plans.

This afternoon at half past three is the meeting, but I go to Mrs. Bickerstethe's early, so please excuse a very hurried letter. I am sending you this just to let you know of my safe arrival.

Please give my love to Miss Burrows, and remember me to the young ladies. Many of them I did not see before I left.

I will write you again very soon, and must beg you to excuse these few lines, writtten this morning.

With a very great deal of love,
I am, Yours affectionately,
Ume Tsuda

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Note in a different hand:
(of Japan): (One of the first 7 Japanese women sent to study in America in her girlhood)



by agsmatters05 | 2019-08-03 06:08 | イベント | Comments(0)

紅茶国で(元)日本語教師(今もちょっとだけ)。身の回りのいろんなことを気ままにつづっていきます。日本語教育のほかに、イギリス風景、たまには映画や料理や本やニュースや旅や、家族のことなど。

by dekobokoミチ