シャペロン(付き添い)役は合計3週間でしたが、その間に書いておきたかった話題が三つ、四つありまして。全部まとめて書いてもいいけど、そうすると長くなって読みにくくなるので、これから一記事一話題で4回つづります。
ヨークは遠いので、本を持ち歩きました。電車の中とか夜の就寝前とかに読みついで読み終わった本2冊。書いておかねば、です。
その一つは今年の本屋大賞第二位、小野寺 史宜(おのでら ふみのり)著 「ひと」。
あられちゃんが持ってきてくださいました。あられちゃん、ありがとう!
表紙の絵もそうだけど、文章がきわめて短くて、漫画風。アニメチックっていうのかな。
たとえば新しい人物が登場するとき、その名前を紹介するのに、
「こいつ、カノ。 カノジョって意味のカノじゃなくて、ナリマツカノ。成田の成に松屋の松に可能性の可に乃木坂の乃で、成松可乃」
というような名前の表記(漢字)についてのこだわりが随所に見られた。これは作品のリアリティーを強めるのに役立っているのか、それとも虚構性(フィクションであること)をかえって出したがっているのか?
とにかく、人の善意が通じる物語は、つらい思いをしないで読めるのでありがたい。「ほのぼのと」した気持ちにさせられる。インターネットでこの本のコメントを集めたページ https://bookmeter.com/books/12776587
を読んだけれど、いくつか「いまどき珍しい人の善意が通じる物語」といったコメントがあった。もちろん、だから余計に憎たらしい人が出てくると憎たらしくなる気持ちも同じ。

「この物語はフィクションです。」と最後に書いてあって、どこまでフィクションなのか、と考えてしまった。100%フィクションなのか、80%なのか、50%なのか・・・と。
フィクションならフィクションであっても、それなりのリアリティー(迫真性、真実味)をついつい求めてしまう私は、ひねくれた読者なのか? 物語が全部とんとん拍子で行くと、どこかおかしいとおもえてしまうこともある。この本が全部とんとん拍子だったとはもちろん言えないけれど、「うーん、まいりました」というような感想ではなくて、「ほのぼのとさせられました、読んでよかった。」というソフトな読後感。これを「本屋大賞もの」と言ってたコメントもあったっけ。

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でもって、 ジャジャーン!
今、この本(↓)に打ちのめされていて、ここ2,3日私の心理状態はちょっと普通じゃないです。
いい意味で深みにはまった感じ。

どうしてこの本が手に入って、どうしてこの本を今読んだのか、それは全く不明です。たぶん、補習校かどこかの古本市でたくさんの本と一緒にみつけて買った本だとおもわれます。長いことツンドクしてた。
これは全くフィクションではなくて、実録、つまり事実の記録です。
嘘は書いてない。だけど、起こったことのすべてが書いてあるかというと、そうでもない。書けないことも書かないこともあるみたいです。それはそれでいいんだと思います。
ヨットレースで7人の仲間と船出して、船が転覆、最後にたった一人生き残り、救命ボート(ライフラフト)で漂流中を通りかかった船に発見され、奇跡の生還を果たした人の本です。
ライフラフト 救命ボートって、こんな(↓)ものらしいです。

27日目にこの人が生きて発見されなかったら、生まれなかった物語、書かれえなかった本です。

遭難(転覆)ということを知りながら、読者は読み進むわけですが、どんどんと大事故に近づいて行って、一日、一日と日数を数えながら生きながらえていく6人(一人は最初の船の転覆時に亡くなる)。水や食料の乏しい中、ずいぶん苦しい(ひもじい)思いをされたのでしょうが、全部は書き尽くせないのでしょう。錯乱状態になったり、幻覚症状が現れたりということもあったようですが、その辺はあまり詳しくかかれていません。とにかく、|

漂流を続ける6人のうちで、最初のかたが亡くなる場面が、とても静かに、淡々と、書き進められていて、それだけに圧倒されます。それから次々と亡くなっていく様子も、かなりスピーディーに書き進められています。
この本を読むとき、ページをめくるのがこわいような気持ちもありましたが、しばらく読み進めないでおこうと、本を閉じてみたりしたこともありました。 本当に強い衝撃をうけた本でした。
生きることと死ぬことは本当に紙一重のような気がします。
誰だってその時を迎えるもので、それがいつなのかは誰にもわからない。
病院で眠るように、あるいは眠ったまま息を引き取った人の話を聞いたことがあります。
できるものなら安らかにその時を迎えたい気がします。
この本を読んでいて、朝起きたら亡くなっていた仲間のことを知り、
そういう亡くなり方があるんだと思うと、すこし気持ちが落ち着けるような気がしました。
極限状態を生きた人の心境を思うと、平々凡々な、日常のちいさなさざ波は、たいしたことじゃないと思えてきます。
水一滴の尊さ、ありがたさもわかるような気がします。
食べ物がある、ということがどんなにありがたいことか、もわかります。
私は佐野さんじゃないけど、この本を読んだ後では、どうしたって作者の心境を想像せざるを得ませんから、やっぱり「生きる」ということを大事にしていこうと思ってしまいます。別にこれまで「生きる」ということを大事にしてこなかったわけじゃなくても、です。
おすすめです。超おすすめ。ぜひ、読んでください。
新潮文庫なら 15円から あるみたいです。
ある意味で人生観、死生観が変わる本だと思います。
これに続く本として、メグに頼んでしまいました。