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紅茶国C村の日々

2月28日(火曜日)泣く子もだまるオフステッド様(その三)

そろそろこの話題も終わりにしようと思っています。

オフステッド視学官、エレーヌさんの苗字はテイラーさんでした。略すと ET。文字通りのエイリアンさまなのでした。^ー^

私の授業に、ほんの5-7分ぐらい、来てくださいましたが、言葉を交わす間もありませんでした。こちらは生徒を中心に授業を続けていればよい、というか、続けるのが本筋、と考えていましたので、ご挨拶もできませんでした。

ま、教室にはいってきたときに、用意しておいた教案のコピーを校長とETさんに差し上げました。一応二人とも教室のはなれたところに腰掛けてしばらく授業を見聞きしていました。途中参加だったので、ETさんはスクリーンを見る前に私の教案を読んでいる気配でした。

授業はただ、画面を見せては、3人の生徒達に代わる代わるスクリーンの言葉を読ませて意味を言わせるということを続けていただけでした。画面がなにより物を言う授業、ということだったとおもいます。でもって、この画面の色(ブルー)が、作った本人の私でもとても強く印象に残って(気に入って)、授業参観を終えて家に戻ってからももう一度見てみたくなってしまったくらいでした。(ハハ、ジコマン族)

私にとっては、その5-7分間だけが、インスペクション(査察)つまりオフステッド様との接触のすべてだったわけですが、エル校長や、言語学科主任のキャ先生や、その他の上司たちは、この二日間、ETさんにお付き合いして、それはそれはたいへんな二日間だったようです。

インスペクション(視察)というのは、ただ単に学校内の授業を参観、観察するだけでなく、校長始め大勢の責任者たちや、数人の生徒代表たちともたっぷりと面談をし、そのうえ、たくさんの書類にも眼を通して、設備や予算やスタッフや生徒数や、全国試験の記録や、カリキュラム全体もチェックする、という総合的なもののようです。わが13年生日本語クラス生徒3人のうちの一人、ピーター君は大学でも語学を専攻志望にしている語学に強い生徒(リングイスト)なのですが、指名されてこの面談に臨み、日本語では三つの文字(ひらがな、カタカナ、漢字)を勉強していることもこの場で説明した、とか。これはあとになってピーター君から聞きました。

さて、ET様が帰った翌日、学校と自宅の両方のメールアドレスに、校長、副校長、そしてキャ先生からイーメールがきていました。「おつかれさま。たいへんいい結果に終わっておめでとう!ありがとう!ウエルダン!」 という内容のメールでした。そして校長のイーメールには後日、祝勝会をする予定、とも書いてありました。(***このメールについて、ちょっとおかしなことがあったのですが、長くなるのでそれはMOREに書いておきます。)

それから週が明けた次の月曜日(3月5日)、校長秘書のミセスKからイーメール。「ごめんなさいあなたに祝勝会の連絡するの忘れてたわ。明日午後3時35分から会議室でパーティー(慰労会)ですよ」と。そしてそのメールにはその日より前に全語学科教員関係者に送ったメールがはりつけてありました。


(ほらね、ここでひがんではいけません。こういうことはマイナーな科目を担当して四分の一のパートタイマー、ジャパニーズ・ティーチャーにとっては、初めてのことでも、めずらしいことでもないのです。だからといってふだんしいたげられているわけでもなく、廊下を歩けば、名前の知らない同僚たち、何の科目の先生かも知らない人たちから、ハーイミチ、ハローミチと声をかけてもらっているのです。公立校ですから、財政困難の原因を創立者や校長や会計係に帰すこともできませんしね。日本語は確かにマイナーではありますが、この学校に日本語ありの認識はある程度根付いていると思うのです。日本語がなくなればいいなんて思っている人はだれもいない、とおもうので、ミセスKのうっかりミスもドンマイ、ドンマイ。)


三月六日(火曜日)、午後3時35分の授業終了後、私はふだんお隣の女子校に直行して3:45からの授業をしないといけないのですが、今日は メンバーの一人N君に単語学習シートのいっぱい入ったフォルダーを渡して、遅れるけどこれやっといて、よろしくね、と伝えておきました。本当は授業優先で、パーティーは欠席してもよかったのですが、ものめずらしさも手伝って、ノコノコと 会議室のお祝い会とやらに行ってみたわけです。部屋に入るとこういうもの (↓) が用意してありました。

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そしてこういうもの(↓)も。

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全部でおよそ24,5人ぐらい集まったかな。SLT といって、シニア・リーダーズ・ティーム。校長と二人の副校長と二人の教頭と会計主任の6人ーこれがいわゆる上層部。学校全体を動かすトップ集団に加えて、言語学科のフルタイム、パートタイムの先生たち全員と、2-3の実習生、そしてもちろんアシスタントのマダムVもいました。その一人ひとり全員が上のワインとカードをもらいました。〈カードの中には SLT 6人からのウエルダンとか、サンキューとか、コングラチュレーションとかの一言とサインが書いてありました。

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どうやら、それぞれ教えている言葉の国のワインを用意されたようでした。これはほとんど校長秘書のミセスKが準備されたもののようでしたが、フランス語の先生たちはフランスワイン、スペイン語の先生たちはスペイン産のワイン、ドイツ語の先生たちはドイツワインでした。ということが分かったのは、私の順番がまわってきたとき、エル校長がひどくアポロジェティカルに、「たいへん申しわけないんだが、日本のワインが手にはいらなかったので。」と言ったからでした。

今にして思えばこういうとき、ジョークとして、あ、いつまでも待っときますから日本のお酒にしてください、といえばよかったかも・・・。(ちょうど料理酒も切れているし。笑) そういう機転、ユーモア、ジョークがすぐ口に出てこない無骨者、愚直なミチ、「あ、いいですよ、私どんなワインでもすきですから」 といってしまいました。でもこれは表向きの社交辞令。はっきり言えば真っ赤なウソ。ワタシ、ワインは好きですけど、赤しか飲まない、というか毎日グラス一杯の赤ワインがワタシの常備薬。赤ワインにポリフェノールが、その中でも「今,話題の抗酸化物質」リスべラトロールが入っていて、それは癌予防その他に相当効くとマジで信じているので、できることなら、赤がもらいたかったなああああ。なのでした。

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校長の短い挨拶では、二日間のインスペクションの結果はほんとうによくて、ETさんは この学校が 「Exceptionally well 例外的なまでにいい」、というコメントを残していったそうです。

それでは、MFL(言語学科)全体がアウトスタンディング(ずば抜けて優秀だ)と評価されたことについて、いったいミチの日本語の授業はどういう役割をになっていたのか、どういう貢献ができたのか、具体的なコメント、フィードバックはあったのかどうか。これが実は何よりも気になるところでした。フランス語、スペイン語、ドイツ語は、複数(4-5人)の先生たちのチームプレイ〈または手分け)で行われているので、ティームティーチングができないのは日本語だけ。孤軍奮闘です。ま、人数もすくないけど、ね。

キャ先生にそれとなく、科目別のフィードバックはあるのか、と聞いたのですが、そういうものはないだろうということでした。ただし、エル校長は、私の質問に答えて、「評価のポイントには、開講科目の多様性(ダイバーシティー)という項目もあって、そういう観点からも高い評価を得た」と言っていました。いくら少人数でも、日本語が授業科目の中にあるのは、ただ単にヨーロッパ系の言語だけを教えるカリキュラムの学校よりは、ずっと開けている、進んでいる、語学教育の重要性が認識されている、と判断してもらえるのでしょう。



日本語が日ごろの授業科目の中に含まれている学校というのは、イギリス国内でもそう多くはないはずで、含まれていてもフルタイムの日本語教師を採用している学校はもっとずっと少ないはず。ここで、また調べてみました。初等、中等教育レベルで、イギリスで日本語を教えている学校はおよそ130校ぐらい。そして、GCSE〈中学卒業認定国家試験〉で日本語を受ける生徒数はおよそ1100人ぐらい、なのでした。これは、イギリス全体でMFL(つまり外国語科目)でGCSEを受ける生徒の数がおよそ35万人なので、約0.3%、つまり外国語科目を受けるGCSE受験生1000人中3人ぐらいしか、日本語のGCSE試験を受ける子はいない。



以下、 More をクリックしてください。3人の「ボス」からのイーメールについて、四の五の言わせていただきました。








こういうのを ディスコース・アナリシス(談話分析) といってもいいでしょうか。
校長とキャ先生とV副校長先生の3人のお祝いイーメールを比較すると、おもしろいことが2-3ありました。
重箱の隅をつつくようなことかもしれませんが、3人3様の表現の仕方が面白かったのです。

(1) 校長からのイーメール。タイトルは good news! bad news! 。

いいニュースは、オフステッド評価が最高の「アウトスタンディング〈抜群に優秀〉」をもらったこと。悪いニュースとは?この学校がモデルスクールのようになって、これからも注目されることになるのだと。だから、今の状態をキープしていかなければならない、気を抜くことはゆるされない、それがバッドニュースだというのでした。(うーん、単純には喜べないのだ。)

(2) リラ副校長のは、ストレートに ウエルダン コングラチュレーション サンキュウ !!!でした。

よくやりました、ありがとう。おつかれさま、とストレートに言ってもらって、多少うれしい気持ちにはなったのですが、ちょっと気になったこと。彼女のイーメールの件名は Very well done!

ところが、イーメールの最初の一言がなんと: Dear French Department、 となっているのでした。私・ミチはジャパニーズ・ティーチャーなのですが、生徒数も少ないし、授業時間もすくないので、一つの学部〈ディパートメント〉 を構成するほどの重要性はない、ということで、けっきょくキャ先生がヘッドとなっているフランス語科にパラサイトしている、というわけでした。(ウーン、なんだかヘン。)

(3) キャ先生のイーメール。

キャ先生のイーメールも、「ありがとう、おつかれさま」というのでしたが、ちょっと一言おまけがありました。

インスペクターは本当に感激して、全てに満足したので、「so delighted, that she would like to come back with her friends! いつかまた友だち〈同僚?)を連れてまた来たい!」のですって。

いいえ、もう来なくていいです、なんてだれも言えませんものねえ。こういときは、胸をはって、どうぞ、どうぞ、いつでもぜひまたおいでください。喜んでおむかえいたします、っていわんといかんのです、よねえ。〈苦笑〉


by agsmatters05 | 2012-03-11 01:03 | Comments(0)

紅茶国で(元)日本語教師(今もちょっとだけ)。身の回りのいろんなことを気ままにつづっていきます。日本語教育のほかに、イギリス風景、たまには映画や料理や本やニュースや旅や、家族のことなど。

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