人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

紅茶国C村の日々

オッ君の試験(4)(あとから追記しました。)

Aレベル (GCE、A2)と呼ばれているオッ君の日本語の試験はどのようなものだったか、ここでは、ありのままの試験を書き出してみたいと思います。もしかして試験の詳細を記録しておくことで、これを読んでくださる方の中のどなたかに、何らかのお役にたつかもしれないと思いまして・・・。
オッ君の試験(4)(あとから追記しました。)_e0010856_2213765.jpg


Aレベル(またはA2)日本語試験2011年。

試験時間は全部で3時間、問題は大きく分けて3題です。合計で80点満点。

セクションA -長文を読んで、設問に日本語で答える。(14点)
セクションB -英文和訳 (10点)
セクションC -作文(エッセイ)2題。それぞれ400~600字で書く。(一つ28点X2=56点)

というわけで、作文の比重がやけに大きいことがお分かりでしょう。得点の7割が作文に当てられているのですから。

第一問(セクションA) リーディングとライティング

「原爆の子」の願い
 広島の「原爆の子」のはとても有名です。国内だけでなく、世界中から たくさんの おりづるが送られてきます。こののモデルとなったのは佐々木禎子さんです。 1945年8月6日、世界で初めての原爆が広島に落とされました。禎子さんも、その後で病気になった人の一人です。 禎子さんは自分の病気が治ると信じて、12才で なくなるまで、つるを おりつづけました。
 禎子さんの話を通して、平和の大切さを伝えようと、おさんの雅弘さん(64才)は 各地で話をしています。7月の日曜日には、広島市内の会場で話していました。「禎子は いつも うちの手伝いをしていた。妹や弟にも やさしかった。禎子がいっしょうけんめい つるをおっていたのに、どうしてあげることもできなかった・・・・」と、禎子さんの様子や両親の思い出を話していました。「禎子は がまん強かった。」、「体の痛みより家族の生活が苦しいことを心配していた。」などと雅弘さんが語ると、会場では、泣いている人もいました。
 雅弘さんが禎子さんの事を語るようになったのは、10年ぐらい前のことです。禎子さんの話が、世界中に広がったので、本当の禎子さんの事を家族の人が伝えるべきだと思ったからです。
 禎子さんと おりづるの話が世界に紹介されたのは、1956年に広島に来たオーストラリア人のジャーナリストが小説を書いたことが、始まりだと言われています。その後も次々と本がでたり、教科書にのったりしました。また、広島の像に似ている「姉妹像」をる動きも95年、アメリカで始まりました。ニューメキシコ州の子どもたちが、禎子さんの話を読んで感動し、お金を集めて、自分たちの姉妹像を作ったのです。その後、いろいろな町に姉妹像を作る運動が広がりました。
 雅弘さんは、「平和を願う動きが広がっているのは、とてもうれしい。やはり、命の大切さを知ってほしいですね。これが、生きたくても生きられなかった禎子からのメッセージですから。」と話していました。


オッ君の試験(4)(あとから追記しました。)_e0010856_19351516.jpg

オッ君の試験(4)(あとから追記しました。)_e0010856_1937943.jpg

ともに Google Image より使わせていただきました。

下の質問に日本語の文で答えなさい。
(a)「国内」とは、どういう意味ですか。
(b)禎子さんは病気のとき、自分はまた元気になると思っていましたか。
(c)佐々木雅弘さんは、今、どんな活動をしていますか。その活動の目的は何ですか。
(d)禎子さんは、自分の兄弟に対しては、どんな人でしたか。
(e)禎子さんは、自分の病気以上に、何に気を使っていましたか。
(f)雅弘さんの話を聞いた人は、その話について、どんな気持ちになったようですか。本文のどこからそう思いますか。
(g)雅弘さんは戦後ずっと禎子さんの話を伝える活動をしてきましたか。
(h)雅弘さんはどうして禎子さんの話を伝える活動を始めたのですか。
(i)禎子さんの話を初めて世界に紹介した人はだれですか。
(j)初めて姉妹像を作った人たちは、アメリカのどこに住んでいましたか。
(k)今世界に姉妹像は いくつか ありますか、一つだけですか。
(l)雅弘さんによると、「禎子からのメッセージ」とは、何ですか。


いかがでしょうか?
これがやさしいか、むずかしいかは、一概に言えませんよね。日本人の大人への質問ならやさしいかもしれませんが、日本語を全然使うことのない国に住んでいて、学校の授業以外で日本語を習うことのない生徒にとって、こういう文章を完全に理解できるまでに日本語力をつけるということは、並大抵のことではない、と分かってもらえますでしょうか。

追記


(1)上の問題文のうち、いくつかの漢字にふりがながふってあります。個人名はすべてふりがなつきです。ふり仮名のついている文字にはアンダーラインをつけておきました。

(2)とっても、とっても大事なこと。

実は、これがいちばん大事なことなのですが、上の長文への14の設問は、答えを見つけ出すためには、テキストにそって答えを探していくこと。つまり、設問(b)の答えは、設問(a)の答えに先行するテキスト部分にはないこと。つまり、設問の順番は、テキストで答えが書いてある順番と一致している、ということです。

最終的には、オッ君はこれを完全にマスターしました。

そのほか、本文から答えとなる部分を抜き出す、というのが有効な答え方だということも、もちろん本人は承知していました。ただし、本文の部分をどこまでそのまま使うか、どこを変えるか、これは慎重にやらないといけないのですが。





Commented by Yoshi at 2011-06-17 20:19 x
私はこのような試験問題を選ばれた出題者の方に大変感謝したいと思います。試験問題とは言え、このような文章を読んで日本の現代史の最も大事な事件を、イギリスの若い人達が知るのは大変素晴らしいことと思います。教科書の一部として読むよりも強く記憶に残るかも知れませんね。恥ずかしながら、私自身も勉強になりました。

それにしても、これだけの短い文章を使って12問もの設問を考え出す方も大変ですね。感心します。
Commented by agsmatters05 at 2011-06-17 23:42
Aレベル日本語試験の、長文読解問題に選ばれるテーマは、日本の青少年活動、教育、環境、国際交流などが、多いようです。出題者のことはよく分かりませんが、とにかく、必修項目が限られている中での出題なので、語彙も、文法も、手心(操作)が加えられているのは確かなことです。毎年の試験問題は、1-2年前には原稿ができあがっているとか、つまり、2年先ぐらいの試験問題がすでに用意されて厳重に保管されているらしいです。ということで、東日本大震災と原発問題でゆれる日本にとってup-to-date なトピックになったのは、まったくの偶然でしょう。
by agsmatters05 | 2011-06-16 02:24 | Comments(2)

紅茶国で(元)日本語教師(今もちょっとだけ)。身の回りのいろんなことを気ままにつづっていきます。日本語教育のほかに、イギリス風景、たまには映画や料理や本やニュースや旅や、家族のことなど。

by dekobokoミチ