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紅茶国C村の日々

2(金)亜蘭君をさがせ。

毎年日本大使館、日本交流基金(ジャパンファウンデーション)などが主催している日本語弁論大会の締め切りが4月5日(月曜日)にせまっています。

でももう学校は昨日でおしまいになってしまいました。

昨日のうちに、亜蘭君は、昼休みのクラブに来て、かれの書いたスピーチを読んで、録音する予定でした。でも、彼はクラブの部屋に現れませんでした。ほかの子に聞くと、学校にはきているということでした。

???な思いで夕方C村の家に帰ってさっそくフェイスブックにメッセージを送りました。
亜蘭君、どうして今日はスピーチの録音に来なかったの?って。

残るはあと、3,4,5の三日間しかない。しかも学校は休みで、どこでどうやって、録音したらいいのかも、気がかりなことでした。

いくつか送ったメッセージのうちのひとつに、先生ごめん、美術の科目のために昼休み部屋からでられなかったんです。先生、いつ録音しましょうか? と書いてきました。

早いほうがいいと思ったので、明日の金曜日はどうお?10時半ごろ学校で会いましょうか?それとも亜蘭君の家がいい?それともC村に来る?と書いてメッセージを送ったけど、返事がありませんでした。

今朝(金曜日の朝)ちょっと寝坊してしまい、あわてて電話しまくったけど、亜蘭君の携帯はつながらず、家の電話も不通。夕べ送ったメッセージが届いているかどうかも分らず、とにかく午前中亜蘭君の家を調べて、(学校から歩ける距離とは知っていたので)行ってみました。家はOn Sale(売り出し中)の札が立ててあり、もちろんベルを押しても、ドアのノック叩きをたたいても返事はなく、誰も出てきませんでした。

それから学校にまわってみたけど、学校はどこもかしこも閉鎖されていました。いくつも入り口があって、ドアもたくさんあるのですが、全部鍵がかかっていて、どの建物にも入れませんでした。

念のため、持っていた学校のラップトップにスイッチを入れてみて、その中に入っている録音用のプログラム(Audacity)が使えるかどうか確かめてみました。キャンパス内のウェブが有効なのかどうか、Audacityは開けたので、亜蘭君さえ来れば録音ができることが確かめられました。

それにしても、亜蘭君、いったいどこに住んでるのか。

帰りかけたところ、出口でばったり出会ったのはキャ先生でした。なんでホリデーに学校に?これは私のキャ先生への疑問でした。でもそんなことはもちろんひとことも触れず、先生実は亜蘭君と連絡がとれなくてこまってるんです、これこれしかじかで・・・と説明したところ、彼は Disorganisedだから、連絡が取れなければそれで仕方がないじゃないですか。といわれてしまいました。スピーチコンテストの彼の参加をあきらめろ、といわんばかり、でした。

それでも、念のため、こんな休みの日に学校の中に入るのにはどうやって入ったらいいんですか?ときいてみました。聞いちゃった。聞いちゃった。ある鍵の数字を教えてもらいました。次からは、休みの日でも学校に入れるぞ。

それにしても空振りを食らった感じ、骨折り損のくたびれ儲けな気分でC村に帰り、またフェイスブックを開くと、亜蘭君、ちゃんとオンラインになってる!

それでまたメッセージを送りました。今どこにいるの?いつなら会えるの?どこでも、あなたの都合のいいときに、都合のいい場所に出かけていくから、場所を教えて、と。明日はどうお?と。

夜の7時過ぎ、しつこく、オンラインの亜蘭君をたしかめて、フェイスブックのチャット機能を使ってメッセージを送ってみました。どうしたの?今、どこにいるの?

ようやくしばらくして、ごめんね、先生(これは日本語でした)。明日もあさっても駄目っぽい。ファミリースタッフ(家庭の事情ってやつでね。)ということでした。

私はもう一度、フェイスブックのメッセージに書き込みました。
あなたがもう録音をしたくないのなら、もうこれ以上しつこくいいません。でもほんとに録音したくないのかどうか私にはどうしても理解できないわ。お父さんか、あなたのお世話をしてくれている人の連絡先を教えて。
と書きました。

それを書いたときにはもう亜蘭君のフェイスブックはオフラインになっていました。どうして?なんで?

不可解きわまりない亜蘭君の態度。自分でしっかり書いてきたスピーチの原稿はなかなかいいもので、かなり上までいけるという予感がして、私は、亜蘭君のためなのか、私の私欲を満たすためなのか、もう区別もつかなくなってきていました。

このまま、何もしないでほうっておいたら、きっと亜蘭君のスピコン出場はおじゃんになる。彼が嫌がってるんなら、無理やりストーカーみたいなまねして、休日まで家に追いかけたりして、押し付けることもなかろう。もう打つ手はないなあ、と考えあぐねて、また一考。学年主任のキャロライン先生なら、なにか連絡先を知っているかもしれない。これは、私のためじゃない。亜蘭君のためだし、学校のためにもなることなんだから、と思って、学校のイーメールアドレスでキャロライン先生にメールを書き始めました。

イースターの休暇を楽しく始められたことと思います。休みに入ってこんなことで、お騒がせしてすみません。でも大変いいスピーチの原稿を書いたのに、亜蘭君がつかまらなくて、録音できずにこまっております。彼の連絡先をご存知でしょうか?締め切りは5日なんです。

英語で上の説明を書いているうちに、だけど、休み中だしなあ、キャロライン先生、どっかに旅行中かもしれないし、こんなメール書いたって、学校のメールアドレスなんてふつう休み中にはだれも毎日チェックしたりしないもんなあ。そう思うと、どうもキャロライン先生へのメールはあまりいい手段ではないような気がしてきました。

それで、そのメールを一応下書きの保存欄に保存し、別の手を打ってみることにしました。

そういえば亜蘭君は、お母さんがいなくて、お父さんと二人っきりだとか。しかもそのお父さんは、失業中とか聞いたし。こないだロンドンのSOASでベアテさんの映画と講演会に行ったとき、亜蘭君はたしか自分のうちに帰るんじゃなくて、なんとかさんという友達の親?、お父さんの親しい友人夫妻?のうちに泊めてもらってるんだとか、言ってた。夜遅く11時半ごろA市の駅に着いたとき、亜蘭君を迎えにきてくれた方、暗かったけど、私は「遅くなってすみません」とあいさつしたら、「(引率)お世話になりありがとう」と笑顔で挨拶してくださったっけ。そうだそういえば、あの方の電話番号ならどっかにメモが残っているかもしれない。

だいたいスクールトリップでは、緊急の連絡先を引率する者は持たされるので、あの日、亜蘭君は自宅に帰るのではないことを私はG校のスクールトリップの係りの(擁護)の先生から聞かされていたのでした。

たしかあの電話番号を書いた紙がどこかにあるはず。捨ててないはず。

余計な紙がいっぱい重ねてある中から、先月9日のベアテの贈り物鑑賞会関連の書類を捜してみました。
本来ならとっくに捨てて整理しておいてもいいはずのパンフレットがたくさんファイルの中にはいっていました。そしてその中から、擁護のヘイゼルさんが渡してくれた手書きのメモ用紙を発見!

あの時は、べつに電話なんかすることもないとおもって、丁寧に見なかったそのメモ用紙に、亜蘭君のことは、A・・・の携帯か、そのご主人の自宅の電話番号・・・におねがいします、と書いてありました。

電話は声が見えない、とは言うものの、こうなったら、最後の手段。
意を決して、電話してみました。

電話口の女性は、亜蘭君が日本語弁論大会のスピーチの原稿を書いた話を本人から聞いて知っている、とおっしゃいました。口ぶりからすると、ソーシャルワーカーのような方だったかもしれません。

亜蘭君のこと、どの程度ご存知ですか?彼はのこの1ヶ月ぐらい、フォースターペアレンツ(養い親)のところにいて、またつい最近新しい後見人の家にうつったばかりなんですよ。まだ同じA市内ですけどね。そうですか、スピーチを書いたことは聞きましたけど、まだ録音してなかったとは知りませんでした。じゃあ、月曜日にでも彼を家につれてきましょうか。それとも学校がいいですか。

あのう、締め切りが5日の月曜日なんで、できたら、すこし前もって明日の土曜日かあさっての日曜日に録音できたらありがたいんですが。

わかりました。じゃ、ちょっと連絡をとってみましょう。おりかえしお電話しますから、電話番号をおしえてくださいな。

そして待つこと、15分。長い待ち時間でした。

亜蘭君も録音したいって言ってましたよ。明日の2時に迎えにいってうちにつれて来ますから、3時半に家に来られますか。アストンクリントンというまちですが。録音にはどんな機械が必要ですか?うちの主人は音楽の仕事を専門にしているので、たいていの機械はそろっているとおもいますよ。

こういうときは英語では、ラブリーとか、グレイト とか、That’s wonderful.Super!って言いますよね。

ことの弾みに、この電話のあとすぐ、学校貸与のラップトップ(ヒューレットパッカード)をさっき、開いてみました。これに録音用のプログラム、Audacity が入っているので、学校のウエブの届かないところでもこれが開けるかどうか確かめるために。

今、そのラップトップでこれを書いています。このラップトップでは、MyDocumentはウエブがないので、開けないけど、私のC村のインターネット接続のルーター リンクシスをしっかりとキャッチしてくれたのです。これは大発見でした。ずっと前に試したときはこれができなかったのに。これからは、このヒューレットパッカードのラップトップ、名づけて、ヒューちゃん、をC村でも大いに利用できることがわかってほんとうに大発見。うれしい。

とんだ亜蘭君の一日でした。でも、めでたく終わってうれしい。弁論大会は、紅茶国中で200人以上の参加者からたったの15人、キーステージ3,4,5という学年別グループのそれぞれから5人すつしか選ばれないので、最終選考に残るかどうかはまったく別問題。でも亜蘭君が書いて読んだスピーチの原稿を無駄にしないために、話が一歩前進してよかった。キャ先生のように考えていたら、この話はポチャっていたとおもう。どうかんがえても亜蘭君が悪いんじゃなくて、周りの大人に遠慮していた亜蘭君が気の毒なだけなんだって。なにしろ、私が彼に日本語を教えたわけじゃないんです。一人で勝手にアニメや漫画やDVDやユーチューブやテレビや本で、へんな日本語ばっかり覚えた生徒なです。

もっとも彼は最近、なでしこ という別名を使うようになっています。そして悪蘭と書くほうが好きだといってましたけど。

Commented by konatum at 2010-04-03 18:59
まあまあ、大変でしたね~。 
こんなにまで 熱心に録音をさせようと努力してくれてるミチさんを先生に持つ アラン君、幸せ者です!
で、5人に選ばれたら、万々歳ですね。

アラン君の名前 良く出てきますよね。
家の色んな事情、気の毒だな~。
これから先も 日本語の勉強、ちゃんと続けられると良いですね。
Commented by agsmatters05 at 2010-04-03 22:02
はい、小夏さん、大変でしたよ。今日もこれから録音に行ってきます。結果はともかく、乗り出した船ですものね。ほんのジンセーのひとコマなれど、物語はどこにでもころがってるんだ、と思いました。ひょろひょろのっぽの亜蘭君。いつもひょうひょうとしていて、昼休みのクラブにくるときいつも、「やあみんな、げんきかねー」と言って入ってきます。そして別れる時は「じゃあな。」と言います。おかしくてたまりません。先日のマフティーデイ(私服を着てもいい日)には、学校中でたったひとり真っ赤なズボンをはいていて、ビックリさせられました。首から何本もネックレスをかけていました。長い髪をしています。まだまだおかしなことはこれからもいっぱい続くと思います。亜蘭君物語、続編をお楽しみに。
Commented by Yoshi at 2010-04-04 02:09
ミチ様、

亜蘭君のご家庭、とても複雑ですね。難しいな。家庭に問題のある学生・生徒の場合、教師が口を出すと、余計なお世話、と言われることもありますよね。でも、仕事は仕事だから職場を出たら私のすることは終わり、と思わないところが、ミチ先生、日本人教師ですね。しかし、亜蘭君、ほとんど独学で、難しい日西欧言語で他の子よりもずっと上達するなんて、頭良いな。やる気を失わなければ大物になるかも。教師をしていると、何年に1人か、教師が一生忘れられないような子に会うと思いますが、そういう子かも知れませんね。 Yoshi
Commented by agsmatters05 at 2010-04-04 20:50
Yoshi様

私がパートで日本語を教えている学校は(男女両校とも)選抜制の公立のグラマースクールで、こういう一芸に秀でる子がいっぱいいます。いわばモンスターチャイルド(いい意味での。)そういう意味でこちらは元気をもらう立場だと思っています。しかも、今回はたった一人だったからできることで、弁論大会に参加する子がほかに5人とか10人もいたら、おそらく私は亜蘭君の録音はあきらめていたかもしれません。希少価値としてのNIHONGO といいましょうか。
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by agsmatters05 | 2010-04-03 06:43 | Comments(4)

紅茶国で(元)日本語教師(今は退職)。身の回りのいろんなことを気ままにつづっていきます。日常の出来事、イギリス風景、たまには料理や本やニュースや出会った人々のことや、家族のことなど。