2013年 04月 07日
米沢富美子さんの本
米沢冨美子さんについては ここ で取り上げさせていただきました。
そして上の記事の最後に、ぜひこの本を読みたい、読まなければ、とも書きました。日付けは、去年の12月13日のこと。
もともとこの本を読め、読めと何度も勧めてくれたのは山梨の長姉。今では年に一回も会えなくなってしまったけど、会うたびごとに「あの本がいいよ、この本を読メシィ(!)」と言って紹介してくれる人。
去年の11月、毎年生徒らが書くクリスマスカードを沖縄の麗先生に送ったとき、物々交換の話がまとまって、紅茶国からは紅茶。そして沖縄からアマゾンドットコムで注文したこの本がついにC村に到着、というわけでした。もっとも、これはメグを日本に見送ったあとのことでしたけど。
それでもって、春休み中のいま、少しずつ少しずつ読みついで、ようやく今日読み終わりました。
apakaba さんのようにみごとな書評はとても書けそうもないので、いつものように一つ、二つ引用でごまかそうとおもうのですが、それはともかく、泣かせられましたねえ。涙、涙、涙。
旦那様が病院に入られたところ辺から、叙述が俄然クローズアップとなり、それまでの年単位、月単位の総論風のお話しではなく、日を追って時刻を追って、朝、昼、夜というぐあいにくわしくなり、お別れの場面もとても圧巻でした。でももっと泣かされたのは、そのあとの告別式での三つのスピーチでした。こんな風に涙を流しながら読んだのは久しぶりのことでした。
夫婦愛の物語は、SFやファンタジーなどよりもはるかにずっと、ふだんの私から遠くかけ離れたものだというプリオキュペーション(!?)があって、しかもこのIQ175の女性物理学者のクリアでハードな筆致から、まさかこういう話の展開になるなんて、と思ってもみなかったのですが・・・。江藤淳さんの「妻と私」以来の傑作でした。
引用箇所を探していると、あれも、これもトいっぱい引用したくなって困ってしまう。とりあえず、ほんの一部だけにしておきます。
そして上の記事の最後に、ぜひこの本を読みたい、読まなければ、とも書きました。日付けは、去年の12月13日のこと。
もともとこの本を読め、読めと何度も勧めてくれたのは山梨の長姉。今では年に一回も会えなくなってしまったけど、会うたびごとに「あの本がいいよ、この本を読メシィ(!)」と言って紹介してくれる人。
去年の11月、毎年生徒らが書くクリスマスカードを沖縄の麗先生に送ったとき、物々交換の話がまとまって、紅茶国からは紅茶。そして沖縄からアマゾンドットコムで注文したこの本がついにC村に到着、というわけでした。もっとも、これはメグを日本に見送ったあとのことでしたけど。
それでもって、春休み中のいま、少しずつ少しずつ読みついで、ようやく今日読み終わりました。
apakaba さんのようにみごとな書評はとても書けそうもないので、いつものように一つ、二つ引用でごまかそうとおもうのですが、それはともかく、泣かせられましたねえ。涙、涙、涙。
旦那様が病院に入られたところ辺から、叙述が俄然クローズアップとなり、それまでの年単位、月単位の総論風のお話しではなく、日を追って時刻を追って、朝、昼、夜というぐあいにくわしくなり、お別れの場面もとても圧巻でした。でももっと泣かされたのは、そのあとの告別式での三つのスピーチでした。こんな風に涙を流しながら読んだのは久しぶりのことでした。
夫婦愛の物語は、SFやファンタジーなどよりもはるかにずっと、ふだんの私から遠くかけ離れたものだというプリオキュペーション(!?)があって、しかもこのIQ175の女性物理学者のクリアでハードな筆致から、まさかこういう話の展開になるなんて、と思ってもみなかったのですが・・・。江藤淳さんの「妻と私」以来の傑作でした。
引用箇所を探していると、あれも、これもトいっぱい引用したくなって困ってしまう。とりあえず、ほんの一部だけにしておきます。
「今夜から明朝にかけてが峠になります」
と主治医が言った。
「峠ってなんだ?峠ってなんだ?」
と私は心のなかで繰り返した。峠を越えれば元気になれるのか。何か施す手はないのか。
家族全員が見守る中、時計がまわって日が改まった。夫の六十歳の誕生日は、中華料理のバースデーパーティーもなしに過ぎていった。「卵スープ、シュウマイ、云々」と、夫が紙に書いたメニューが、そのまま私のハンドバッグに入っている。
(略)
一時が過ぎ、二時が過ぎた。私は、病室の窓から見える暗い空に目をやった。夫は遠いところに行ってしまうのだろうか。三十五年の日々のあれこれに思いを馳せた。夫に支えられてきた私の人生。
突然、私はこのまま夫を行かせてはならない、と思った。遅いかもしれないが、私の感謝の気持ちを伝えなければならない。私は夫の耳に口を寄せて、話しかけた。
「まあちゃん、ありがとう。たくさん、たくさん、ありがとう」
と言った。娘たちにもパパにありがとうと言ってあげて、と促した。長女は。
「いやだ。私はまだ、パパとお別れできない」
と泣いた。皆が交代で夫の手を握った。
私は夫に伝えておかなければならないことを、祈るような気持ちで話しかけた。どうかどうか、夫の耳に届いてほしい。
「これまでは、まあちゃんが支えてくれたから、今度は私がまあちゃんを支える番だよ。どーんと寄りかかってくれても、大丈夫だよ。
この先、何が起ころうとも、二人は永久に一緒だよ。
二人は出会えてよかったね」
そのとき、信じられないような奇跡が起こった。もう八時間以上も、呼びかけに応えなかった夫が、目を開いた。
by agsmatters05
| 2013-04-07 08:29
| 本を読んで
|
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