紅茶国C村の日々


米沢富美子さんの本

米沢冨美子さんについては  ここ で取り上げさせていただきました。

そして上の記事の最後に、ぜひこの本を読みたい、読まなければ、とも書きました。日付けは、去年の12月13日のこと。

e0010856_2411519.jpg
作品名ふたりで紡いだ物語
作者名米沢富美子
評価(星5つ)
これもメグがらみです。


もともとこの本を読め、読めと何度も勧めてくれたのは山梨の長姉。今では年に一回も会えなくなってしまったけど、会うたびごとに「あの本がいいよ、この本を読メシィ(!)」と言って紹介してくれる人。

去年の11月、毎年生徒らが書くクリスマスカードを沖縄の麗先生に送ったとき、物々交換の話がまとまって、紅茶国からは紅茶。そして沖縄からアマゾンドットコムで注文したこの本がついにC村に到着、というわけでした。もっとも、これはメグを日本に見送ったあとのことでしたけど。


それでもって、春休み中のいま、少しずつ少しずつ読みついで、ようやく今日読み終わりました。

apakaba さんのようにみごとな書評はとても書けそうもないので、いつものように一つ、二つ引用でごまかそうとおもうのですが、それはともかく、泣かせられましたねえ。涙、涙、涙。

旦那様が病院に入られたところ辺から、叙述が俄然クローズアップとなり、それまでの年単位、月単位の総論風のお話しではなく、日を追って時刻を追って、朝、昼、夜というぐあいにくわしくなり、お別れの場面もとても圧巻でした。でももっと泣かされたのは、そのあとの告別式での三つのスピーチでした。こんな風に涙を流しながら読んだのは久しぶりのことでした。

夫婦愛の物語は、SFやファンタジーなどよりもはるかにずっと、ふだんの私から遠くかけ離れたものだというプリオキュペーション(!?)があって、しかもこのIQ175の女性物理学者のクリアでハードな筆致から、まさかこういう話の展開になるなんて、と思ってもみなかったのですが・・・。江藤淳さんの「妻と私」以来の傑作でした。

引用箇所を探していると、あれも、これもトいっぱい引用したくなって困ってしまう。とりあえず、ほんの一部だけにしておきます。

「今夜から明朝にかけてが峠になります」
と主治医が言った。
「峠ってなんだ?峠ってなんだ?」
と私は心のなかで繰り返した。峠を越えれば元気になれるのか。何か施す手はないのか。

家族全員が見守る中、時計がまわって日が改まった。夫の六十歳の誕生日は、中華料理のバースデーパーティーもなしに過ぎていった。「卵スープ、シュウマイ、云々」と、夫が紙に書いたメニューが、そのまま私のハンドバッグに入っている。

(略)

一時が過ぎ、二時が過ぎた。私は、病室の窓から見える暗い空に目をやった。夫は遠いところに行ってしまうのだろうか。三十五年の日々のあれこれに思いを馳せた。夫に支えられてきた私の人生。

突然、私はこのまま夫を行かせてはならない、と思った。遅いかもしれないが、私の感謝の気持ちを伝えなければならない。私は夫の耳に口を寄せて、話しかけた。
「まあちゃん、ありがとう。たくさん、たくさん、ありがとう」
と言った。娘たちにもパパにありがとうと言ってあげて、と促した。長女は。
「いやだ。私はまだ、パパとお別れできない」
と泣いた。皆が交代で夫の手を握った。

私は夫に伝えておかなければならないことを、祈るような気持ちで話しかけた。どうかどうか、夫の耳に届いてほしい。

「これまでは、まあちゃんが支えてくれたから、今度は私がまあちゃんを支える番だよ。どーんと寄りかかってくれても、大丈夫だよ。
この先、何が起ころうとも、二人は永久に一緒だよ。
二人は出会えてよかったね」
そのとき、信じられないような奇跡が起こった。もう八時間以上も、呼びかけに応えなかった夫が、目を開いた。


[PR]
by agsmatters05 | 2013-04-07 08:29 | 本を読んで | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://agsmatters.exblog.jp/tb/20085170
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]

<< 4月6日(土)キッシュを作ってみた。      31.3.13 イースター・サンデー >>

紅茶国で日本語教師。でも、身の回りのいろんなことを気ままにつづっていきます。日本語教育のほかに、イギリス風景、たまには映画や料理や本やニュースや旅のことなど。
by dekobokoミチ
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
うちの食卓 Non so...
エキサイトブログ向上委員会
小さな手紙
人形町からごちそうさま
草仏教ブログ
vivid memories
今週のピックアップブロガー
あぱかば・ブログ篇
NED-WLT
◆Cinq*Etoiles◆
大隅典子の仙台通信
ばーさんがじーさんに作る食卓
花の仲間調べ
Strawberry a...
ライフ IN ロンドン
こばやしゆふ yu-...
薬膳のチカラ
マリーあんころネットの部屋
一歩一歩!振り返れば、人...
おうち*
小夏おばさんの 自己中心...
トルコ子育て生活
「ROMA」旅写ライター...
noraばばの お遊び記
そんな毎日、こんな毎日
vege dining ...
ロンドン 2人暮らし
エリオットゆかりの美味し...
ようこそ!おうちカフェへ
妻の小言。
長坂道子「ときどき日記」
ハチドリのブラジル・サン...
イギリス ウェールズの自...
** mana's K...
三溝清美 Cooking...
- AMERICAN D...
Bienvenue en...
honey+Cafe
agsjapanese
音作衛門道楽日記
♪アロマと暮らすたのしい毎日♪
おひとりさまの食卓plus
好きを仕事にする大人塾「...
犬とご飯と雑貨。
sakuraの英国便り
オオニシ恭子の薬膳日記
7つの塔が見える窓から ...
農家の嫁の事件簿 +(ぷらす)
Chakomonkey ...
ベジタリアンミットゥンと...
ごちそうさま@Cafe
大好き海外ドラマ&恋して...
風に色をつかせるとき
Linen Style...
un_voyage♪♪
おいしいは嬉しい
すなおに生きる
北欧・スウェーデンよりシ...
カフェと畑と犬と猫
久次郎さんブログ
追憶ノート
Photos from ...
YUKA’sレシピ♪
くらしのし
マリーあんころネットの部屋2
オカリナ / エトランゼ...
アメリカからニュージーランドへ
やわらかい陽ざしのなかで
Delicatusib
すぎりおのがんばったるねん
クラシックな暮らし
daidokoro
2度目のリタイア後のライフ
エゲレス暮らし
世に倦む日日
ロンドン発 おもてなしテ...
アメリカ 青春の記録
ロンドンの食卓
WITH LATTICE
野口家のふだんごはん ~...
日々の記録
素敵な日々ログ+ la ...
人生、苦ありゃ、楽あるさ...
最新のコメント
はいはい、小夏ばあちゃん..
by agsmatters05 at 08:08
わぁ、良いなぁ〜、グラン..
by mittyan-buhibuhi at 16:54
じゃ、黒猫が横切っても横..
by agsmatters05 at 08:53
すっかり、秋模様ですね〜..
by mittyan-buhibuhi at 10:56
LINEですよ。 動画..
by mittyan-buhibuhi at 21:47
小夏さんとこは LINE..
by agsmatters05 at 01:47
marri さん、 m..
by agsmatters05 at 01:38
よしこさん、 新米ママ..
by agsmatters05 at 01:29
小夏さん、メグは2週間、..
by agsmatters05 at 01:25
お疲れ様でした。 紅茶..
by mittyan-buhibuhi at 23:14
エキサイト以外のブログ
その他のジャンル
a-ranking
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧