紅茶国C村の日々


柳澤桂子さんの本

作品名いのちの始まりと終わりに
作者名柳澤桂子

草思社   2001年6月
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メグがC村のトイレにおいていった本です。とても興味深い情報がたくさん盛り込まれている本です。科学的な知識にうとい私でも読み進められるように、わかりやすく語りかける口調で書いてあります。

以下、MORE に第一回目の講話の最初の部分を数ページにわたって、写しとらせていただきました。赤ちゃん(ひとつのいのち)が生まれるまでの仕組みをこれほどていねいに分かりやすく書かれたものを今まで私は読んだことがありませんでした。最後に作者が言っているように、ほんとうに神秘的な話だとおもいました。ぜひシェアしたいと思って、時間をかけてタイプしました。お時間のある方はどうぞ。ない方はあとから戻ってきてまた一度じっくりとお読みくださいませんか。

Warning   警告   長いですよおおお。




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「ひとつのいのちが生まれるまで。」
(15ページ)卵と精子が受精する前から話をはじめます。膣に入った精子は、子宮の口をめざして泳ぎはじめます。このときの精子の数は、約五億個といわれていましたが、最近は精子の数が減っているということです。膣から卵管までは、15~18センチありますが、精子は、平均数時間で卵管に到達します。卵管の中で、精子は卵と出会うのですが、卵に出会えないときはいったりきたりしながら、数日も卵をまちつづけることもあります。

精子は、オタマジャクシのような形をして、長い尾を持っていますが、卵管の中を1センチ進むためには、尾を1000回も振らなければなりません。何億という数の精子が膣から卵管へ向かいますが、受精に預かるのは、たったひとつです。なぜ精子が、同時に何個も卵の中に入れないのかという仕組みは、ウニでよく研究されています。卵管の中は絨毛に覆われていて、精子には進みにくい環境です。また、女性の側の白血球が精子を異物だと思って殺してしまうこともあります。

いろいろな障害を乗り越えて、数百の精子が卵に到達します。けれども、卵はまだ栄養細胞の層に取り囲まれています。この細胞は、その名の通り、卵に栄養をあたえる細胞です。これらの精子は尾を振りながら、卵を包んでいる栄養細胞の層に穴をあけようとします。そのうちに数個の精子が栄養細胞層のやぶれたところから、進入します。(16ページ)そしてその中のひとつが卵の膜に到達します。するとその瞬間に卵の膜は、それ以上の精子が入らないように変化します。受精のチャンスを逃した精子は、それでも何とかして卵の中に入ろうとして、数日間努力しますが、果たせず、むなしく死んでいきます。自然は厳しいですね。

卵に到達した精子の尾は切り落とされ、頭だけが卵の中に入ります。精子の外側を包んでいた膜と、卵の膜が溶けあって、精子の核は、卵の中に侵入し、精子の核と卵の核が融合したところで受精は完了です。こうして、父親の遺伝子と、母親の遺伝子が混ざり合い、新しいいのちがはじまります。この一個の受精卵、すなわち一個の細胞から、人間の形ができるというのは、どう考えても不思議です。

受精卵は約十二時間後に最初の細胞分裂をして、二つになります。その後も十二~十五時間に一回の割で細胞分裂はつづき、細胞数は次第に増えていきます。この間に、受精卵は卵管から子宮に向かって移動します。受精卵は、三日ほど卵管にとどまって、やがて、子宮の中に入っていきます。受精は子宮の中で起こるのではなく、卵管の中で起こります。卵管は子宮と卵巣をつなぐ細い管です。

子宮に入るころには、受精卵は分裂して、100個あまりの細胞になっています。(17ページ)これだけの細胞数になったものは、もう受精卵とは呼ばす、胚(はい)といいます。胚の細胞は、まずヒトのからだをつくるものと、子宮に着床(付着)するためのものとに分化します。子宮に着床するための細胞は、子宮の内膜とともに、胎盤に発達していきます。胎盤に、母親からの二本の血管が生じ、これが胎児の血管とつながります。この血管が”へその緒”です。このへその緒の血液を通して、胚は栄養分をとったり、廃棄物を運んでもらったりします。胚は着床に適した場所を探すために数日もかかることもあります。この間にも細胞の分裂はつづき、数百個の細胞に成長します。

胚が着床すると、母親の脳の下の方にある視床下部が脳下垂体を刺激して、性腺刺激ホルモンが分泌され、血流にのって卵巣に到達します。卵巣から女性ホルモンのひとつである、エストロゲンが分泌され、血中を運ばれて、脳下垂体に妊娠したことを知らせます。知らせを受けた脳下垂体は、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌して、月経を起こさせないように指示します。ここまでの過程にほぼ八日かかりますが、妊娠した女性は、まだ何の変化も感じません。

しかし、それから一週間もすると、月経の遅れに気づき、乳房がすこし大きくなたことを発見します。また、からだが疲れやすく、いらいらしたりしますが、このころの胚(18ページ)の大きさはたった一ミリぐらいです。

胚と子宮内膜との間には胎盤ができ、次第に発達していきます。胎盤は母親と胚を結ぶたいせつな器官ですが、その重要な働きのひとつに、絨毛性性腺刺激ホルモンをつくることがあります。このホルモンは、母親の卵巣に働きかけて、黄体ホルモンの分泌をうながしつづけます。黄体ホルモンも脳下垂体に働きかけ、長期にわたって排卵の必要がなくなったこと、また月経によって胚を捨ててしまわないようにと指示します。胚は母親のからだにとっては異物です。普通、体内に入った異物は、免疫反応で取り除かれますが、胚は免疫反応によって除去されることはありません。なぜ除去されないかは、今研究されていますが、まだよくわかっていません。

受精後八日めになると、子宮の口は粘液性の栓でふさがれます。

受精後十九日めには心臓が小さな袋状の構造となって、さかんに拍動しているのがわかります。やがて、心臓の中に赤い血液が流れるのが見えるようになります。

受精後二十一日め、胚は二ミリくらいになっています。

受精後三十五日め。このあたりから先は、胚によって少しずつばらつきが生じるので、日でいわないで何週めということにしましょう。三十五日は五週めの終わりにあたります。(19ページ)このころには胚は、長さが一センチほどになって、よく発達した心臓と肝臓が目立ち、眼には黒い色素ができはじめます。

受精後六週めに入ると、1.5センチほどになり、羊水の中で眠っています。羊水は胚をつつむ羊膜を満たしている液体ですが、その成分は、太古の海水の成分と非常によく似ています。太古から連綿とつづく歴史のなかで胚は生きているのです。

受精後七週めになると、脳の神経細胞の数は、おおよそ100億個に達します。脳の神経細胞は突起をつくって、たがいに接触し、原始的な神経回路を形成しはじめます.

八週めには、すべての内臓ができ、指もできて、小型の人間の形ができあがります。この時期から、胚は胎児と呼ばれるようになります。羊膜で囲まれた袋の中は十分に広く、胎児は羊水の中でからだを動かしたり、しゃっくりをしたりして、のんびりと過ごしています。

受精後13~16週(四ヶ月)めには顔がつくられます。顔の表面には五つの盛り上がりがあらわれて、次第に顔の形をつくっていきます。色素が沈着して黒々としている眼には、大福をつまんで両側から引き寄せるような具合に皮膚の覆いがかぶせられ、まぶたとなり閉じられます。眼が開くのは、七ヶ月めです。顔の両脇に耳の外形ができはじめるのは、(20ページ)八週めですが、胎児が音を聞けるようになるのは、四~五ヶ月めのはじめです。次第にいろいろな音に反応するようになり、母親のくしゃみに驚いて飛び上がったりします。

三ヶ月目ころから、胎児の全身に毛が生えてきます。やがて、頭髪と眉毛だけがすこし太くなり、それ以外の体毛は、誕生前にほとんど抜け落ちてしまいます。これは、進化の過程で私たちが獣だったころの名残なのでしょう。

胎児の性別は、受精の瞬間にきまり、外形から見て男女の差がわかるのは、十六週めくらいからです。受精後八週めには脚の間に小さい膨らみが見えるようになります。やがて、この小さな膨らみの外側にもう一対の突起ができ、男児の場合には、この突起が二つとも発育して陰嚢(いんのう)となり、女児の場合には、突起の間に切れ目が入って膣になります。男児の場合には、十三週目には腹腔内に原始睾丸ができていて、精子をつくる準備がはじまっています。女児の場合にも、受精後十一週目には、すでに卵巣ができていて、四ヵ月めに入ると、五百万個の卵母細胞(卵のもとになる細胞)ができます。こんなにはやい時期から、もう次の世代の子供が準備されているのです。

三十八週(最終月経後四十週)めになると、いよいよ胎児を母親のからだの外に娩出し(21ページ)なければなりません。陣痛がはじまると、胎児は骨盤の中を回転しながら膣に向かって進みます。陣痛があるたびに子宮の筋肉は収縮して、胎盤とへその緒を圧迫し、胎児への酸素の供給が少なくなります。この危機的な状況から胎児を守るために、胎児の副腎という器官から、アドレナリンとノルアドレナリンが分泌されます。これらのホルモンは、心臓から送り出される血液の量と、心臓の拍動の回数を増やします。アドレナリンはまた、気管支を拡張し、空気呼吸に備えて肺の中にある粘液などをとりのぞく働きをもっています。

外気に触れた赤ちゃんは、空気を吸い込まなければなりません。肺の二十五億個の肺胞(空気の袋)には、羊水や肺の分泌物が入っていますが、それは血液によって吸収され、かわりに空気が満たされます。その最初の呼吸のときに赤ちゃんの上げる声が産声です。へその緒を通して、母親とつながっていた血液の流れも急いで変えなければなりません。羊水に浮いていた状態から、空気の満ちている世界に出るには、たくさんの調整が必要です。それらのことが瞬時におこなわれて、赤ちゃんは無事に出産されるのです。

(略)

(22ページ)赤ちゃんができる過程はほんとうに神秘的です。一人の赤ちゃんができるまでにたくさんの細胞が死にます。たとえば、手に指が五本あるのは、指と指の間にあった細胞が死んでなくなったからです。母体が胎児を異物として排除しないことも不思議です。たった一個の0.1ミリくらいの受精卵から人間ができるのですから、こんな神秘的なことは、ほかにはないように思えます。

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by agsmatters05 | 2013-04-05 08:03 | 本を読んで | Trackback | Comments(0)
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