面白いこと(その4) - 猿橋勝子さんと米沢冨美子さんの本。

おなかをかかえて笑い転げるように面白いことではないのですが、最近興味深く読んだ日本語の本2冊についてメモっておこうとおもいます。

しばらく前にインターネットで購入して読み続けている英語の本(In the Midst of Life, ジェニファー・ワース著)が、とてもいい本なのですが、やっぱり英語の本をよむのは時間がかかる。そこへいくと飛び入りでもすぐ読めてしまう日本語の本。両方とも、ブリストルのメグのところから、オアガリというか、オサガリというか、読み終わったと聞いて、もらってきました。

実はどちらも、去年の姉妹会のとき、山梨の長姉がどうしてもメグに読ませたい、といって持ってきてくれた本でした。

まず、一冊目。
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「猿橋賞」という女性の科学者を表彰する賞を創設された方の伝記です。
岩波科学ライブラリー、米沢冨美子著

裏表紙にはこう書いてありました。
戦前戦後の女性が理系の道を選ぶことも困難な時代に、海水の放射能汚染や炭酸物質の研究で世界的な業績をあげた地球化学者ー猿橋勝子。さらに後進を育てようと女性科学者を顕彰する「猿橋賞」を創設。女性科学者を励まし続けた。科学者として人間として自らの哲学とそれを貫く強い意志をもって、まっすぐに生きた猿橋勝子の初の評伝。

とてもよくまとめて書いてあります。伝記には、業績の説明が片手落ちで内面の軌道ばかりを強調して物語のように生涯を語るタイプと、客観的な事実の整理をまとめて語るタイプと、2種類あって、その両方のバランスをうまくとることは、よほど本人をよく知っている人でなければむずかしいことでしょう。米沢氏の猿橋伝はどちらかというと後者。科学的な業績の説明が要領よくまとめてあって、ありがたい本でした。

勝子さんの内面にはあまり入っていないのですが、それだけに、逆にかかれたことに信頼がおけるような気がしました。こういう伝記(本)の読後感をこのブログに書くときはいつも、いちばん印象に残った箇所を引用したいとおもうのですが、今回はどこといって、それをする場所がみつからない。それだけに著者、米沢氏の堅固な執筆姿勢が功を奏している本だということなのでしょう。それでも一応、あえて、引用を。
「自分へのまわりからの処遇や研究環境が望ましいものでなくても、それで落ち込んだり、それに対して抗議したり、という反応をするのではなく、研究成果を上げ、実績を積むことで、自分のことを皆に議論の余地なく認めさせる。
「女性を差別するのは、怪しからん」「女も男も能力は同じはず」と自分のほうから声高に主張するのではなく、成果を見せることで、こちらが黙っていても相手が納得し、女性を差別する根拠が全くないことに気付かせる。
それが猿橋自身の貫いてきた生き方であり、「猿橋賞」の受賞者たちや女性科学者たちに猿橋が求める生き方である。
受賞者は、それぞれの研究場所で成果を上げなさい。それが受賞者の最大の使命」と猿橋は口癖のように言った。(P.110)


という上の本の著者の米沢冨美子さんの自伝(↓)です。(岩波ジュニア新書。「まず歩き出そうー女性物理学者として生きる」)

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猿橋勝子さんも、女性初の日本学術会議会員となった方。米沢さんは女性初の日本物理学界の会長になったという方。IQ(知能指数)175という頭脳の持ち主。二人とも、数々の研究業績、発見、をされた方たち。眼の覚めるような、輝かしい実績を残された女性たちの伝記でした。

米沢さんの本を読んでいて、いちばん心を動かされたのは、1980年9月8日に京都でサマーインスティテュートという国際会議を開催したところ。何もかも一人でとりしきって、成功させた国際会議の記述でした。

「閉会の辞は松原先生にお願いした。先生は、「世界中、日本中から、たくさん集まり、活発な議論をしてくださったことに対して、組織委員会を代表して感謝したい」と述べられた後、「会議が成功であったことに異を唱える人はいないだろう。組織委員会といっても、実質的な企画・運営は、ほとんどプロフェッサー・ヨネザワ一人の手で行われたのであり、彼女の献身的な努力なしには、会議の成功はあり得なかった。ここで拍手を持って彼女の努力をたたえたい」と言ってくださった。満場の拍手が鳴り響いた。

予想していなかったことで、身に余る言葉だ。目頭が熱くなったと思ったら、涙がツーと頬を伝った。隣に座っていた友人が、そっとハンカチを差し出してくれた。

拍手が終わっても誰も立ち上がらない。私が何か言うのを待っているのだ。あわてて涙を拭いて皆の前に立ったが、声がでない。何かしゃべるとどっと涙があふれ出しそうで、「ありがとう」と「また、次の会議で会いましょう」だけを、やっとの思いで言って席に戻った。

涙は断りなしに出てくる。別れの挨拶に来てくれる人。「成功おめでとう」と言ってくれる人たち。皆に、涙の顔で応えた。参加者一人ひとりに、「来てくれて、ほんとうにありがとう」と言いたい気持ちだった。(125ページ。)


そういえば山梨の長姉がずっと前から「二人で紡いだ物語」と言う本があるから読むように、と勧めてくれていたのでした。同じ作者の本。アマゾンの古本でこの本をぜひとも入手して読みたい。読まなければ・・・。

米沢冨美子さんのウエブサイトは こちら ⇒ http://ja.wikipedia.org/wiki/米沢富美子
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by agsmatters05 | 2012-12-13 11:57 | 本を読んで | Trackback | Comments(0)