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紅茶国C村の日々

ロレンちゃんのスピーチコンテスト(その二)

「日本語の弁論大会に出てみない?」と誘ったら、すぐに「やってみます」ということで、ロレンちゃんはまもなく、スピーチの下書きを書いてきました。3月の中旬のことでした。最初の草稿を英語で書いて、それに、インターネットの辞書を使いまくって、日本語に訳したものでした。

うーん、ひととおり読んだけど、どうも言いたいことがはっきりしない、スピーチの論点がピンとこない、ものでした。

題は「芸者について」でした。「メモワーズオブゲイシャ」=「芸者の回顧録」という本を読んで、芸者と日本の伝統文化について考えたものでした。作文として、一応、できあがってはいましたが、何をいちばん言いたいのか焦点が定まっていなくて、何を言いたいのかピンとこない、訴えるものが弱いなあ、という感じでした。もちろん、そのままでも、日本語の作文としては上出来で、GCSEでも、GCE(Aレベル)でも、作文(エッセイ)のテストなら、点数は高得点がとれるはずのできばえでしたが、スピーチとして、おおぜいの聴衆の心を動かせるような内容ではないなあ、とおもわずにはいられませんでした。

週に一回しか会いませんから、次の週、ロレンちゃんに会ったとき、正直に私の感想を伝えました。もう一度、言いたいことを絞って、それを全面につよく出すようにして、原稿を書きなおしてみない?と言いました。

ロレンちゃんは、私の指摘をすなおによく理解し、納得してくれて、なんと次の週には、全面的に訂正した2度目の原稿を、英語、日本語、両方で書いてもってきてくれたのでした。

「皆さん、こんにちは。私の名前はロレンです。今日、私は皆さんといっしょに芸者の文化について、その伝統を守ることについて、考えてみたいです。」という風にスピーチを書き始めていました。スピーチの最初に何を言いたいかをはっきり表明するのは、とても大事なことなんですよね。
さらに、続けて。

「『メモワーズオブ芸者』の本を読んで、日本の芸者に興味を持ち、いろいろとリサーチをしてみたこと。芸者が、ロレンちゃんの大好きな、音楽、ファッション、美術をいろいろと勉強しなければいけないことを知って、とてもうれしかったこと。芸者になるための訓練(トレーニング)が長くかかること。「おきや」に住んで、踊り、楽器、唄、茶道や華道までならうこと、舞妓と芸者のちがい、そして、芸者の悪い面、よい面。さらに、歴史的に、はじめて日本に芸者があらわれてから今まで続いてきた伝統が、第二次世界大戦後途絶えて、芸者の数が激減したこと、芸者は「娼婦」と同じだと言って批判されるけれど、芸者と娼婦はすべて同じじゃないこと、この伝統を守らなければ今の日本から消えてしまうこと。それは、とても残念でならない。皆さんは、どう思いますか?私は、この伝統がなくなる前に、芸者の文化が残っているうちに、いつか早く日本に行って、芸者の踊りをみてみたい。ご静聴ありがとうございました。」

という風に、スピーチは終わっていました。

いくつかの『てにをは』や、単語を変更させましたが、全体的な枠組みは、この第2稿目で出来上がっていました。

芸者の悪い点として、『メモワーズオブ芸者』の本にでてくる、仲間内の争いや嫉妬について、ロレンちゃんは、辞書で調べたのでしょう、「しれつな競争をする」なんてむずかしい言葉を使っていました。でも、私はこれをあえて、訂正しませんでした。彼女が自分で選んで使った言葉ですから、難しくてもそのまま残しておくほうがいいと思いました。そのほか長さを調節するために、文を削ったり動かしりはしましたが、骨子は、ロレンちゃんの第2稿でほぼ決まり、でした。

あとは、4月のはじめまでに、ロレンちゃんがこの原稿をすらすらと読めるように練習して、うまく朗読できるようになったら、それをテープにとって、弁論大会の主催者にメールで送ればいい、だけのこと、なのでした。


ロレンちゃんのスピーチコンテスト(その二)_e0010856_4214964.jpg


A駅からロンドン、マリルボーン駅にむかうチルターン・レイルウエーの車内。
土曜日なので、始発のA駅あたりは、すいていました。
by agsmatters05 | 2011-06-26 00:42 | Comments(0)

紅茶国で(元)日本語教師(今もちょっとだけ)。身の回りのいろんなことを気ままにつづっていきます。日本語教育のほかに、イギリス風景、たまには映画や料理や本やニュースや旅や、家族のことなど。

by dekobokoミチ